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2010-01-04

地方空港はこんなにたくさん必要なのか?(産経新聞)

 地方空港の存在意義が問われている。狭い国土に都道府県の倍以上の97空港が乱立。もともと利用者が少なく大半が赤字だが、経営難に直面する航空会社の相次ぐ路線廃止が苦境に追い打ちをかける。潤沢な特別会計を原資に、不採算空港を造り続けてきた航空行政の弊害が次々と明らかになっている。

 ■“空港ジャック”

 「定期便が少ないのを逆手に取った発想。面白いでしょう」

 来年3月、国内98カ所目の空港として産声を上げる茨城空港。大手旅行会社「HIS」が来年5月の大型連休期間中に同空港でチャーター便を最大20本運航させる計画をぶち上げたことに、茨城県の担当者は、そう胸を張る。

 異例の“空港ジャック”の実現は「滑走路があまり使われない」という窮状の裏返しといえる。国は当初、国内4路線が就航し、年間約81万人が利用すると予測。ところが開港まで3カ月を切った段階で就航が決まった定期便は、アシアナ航空(韓国)のソウル線1日1往復のみ。国内の定期便が就航するめどは立っていない。年間利用客は当初予測とはかけ離れた8万人程度にとどまると県は見込んでいる。

 お寒い状況は、空港ターミナルビルも同じだ。テナントとして8区画の出店者を募ったが、応募があったのは6区画。免税店と売店の出店を予定していた残り2区画が埋まらないまま開港を迎える可能性が高い。

 空港整備費220億円のうち茨城県の負担は70億円。低コストでコンパクトを売り文句に、県は「首都圏第3の空港」の存在意義をPRする。だが、県空港対策課からは「空港は客が乗り降りするだけの場所ではない。朝市や結婚式とか集客できるイベントをビルで行って活性化を図りたい」との本音もこぼれる。

 不採算路線の整理を進める航空会社の動きも、地方空港の苦境に拍車をかけている。空港の主な収入源となる着陸料収入の減少が自治体の財政を直撃するからだ。

 経営再建中の日本航空は、来年4月から静岡-札幌、静岡-福岡便を運休し、静岡空港から撤退することを正式に決定。日航は福島空港からも今年1月末で撤退した。同空港の今年度の利用者は、昨年度の約42万8千人から4割近く減る可能性もあるという。

 ■26空港中22空港が赤字

 国土交通省によると、国が管理する全国26の空港のうち、営業損益では22空港が赤字。黒字は、伊丹(大阪)、新千歳、鹿児島、熊本の4空港にとどまっている。地方自治体が管理する空港も大半が赤字とみられる。

 不採算空港の乱立を招いた元凶と指摘されるのが、空港整備などに使われる特別会計の存在だ。

 社会資本整備事業特別会計の空港整備勘定で、旧名の空港整備特別会計から通称「空整特会」と呼ばれている。創設は昭和45年。航空需要の急増に対応するのが目的だった。日本航空など航空会社が支払う空港使用料や着陸料、航空機燃料税の一部が主な財源で、国庫にいったんプールした後、政府が全国各地の空港に振り分ける。

 今年度の当初予算でも5280億円を計上。来年10月に新滑走路の供用開始を控える羽田空港の整備などに多くが割かれているが、既存の地方空港の維持管理や人件費などにも充てられている。

 特別会計であらかじめ一定の資金が確保されているから、甘い需要予測に基づいて採算が見込めない地域にも空港が造られる。鉄道や道路など交通網の整備が行き渡り、国内航空路線の利用者数が伸び悩んでいるのに、空港を造り続ける仕組みは40年間温存され続け、狭い国土に空港が乱立する事態を招いた、というわけだ。

 ■「土建行政の象徴」

 地方の意向も空港整備を後押しした。郊外に空港ができれば、街の中心部から道路が伸びるから建設業界は潤う。観光客が増え、企業も進出すれば、地元経済が活性化する…。新幹線や高速道の整備と同様、多くの自治体が、さまざまな期待を抱いて積極的に空港誘致に動いてきた経緯がある。

 『血税空港』(幻冬舎新書)などの著書があるノンフィクションライター、森功さんは「空港建設と道路建設は一体不可分。だから、多くの首長が選挙公約に空港誘致を掲げてきた。不採算空港の乱立は、土建行政の象徴と言っていい」と話す。

 ■「30空港が適正」

 公共事業の見直しを掲げる鳩山・民主党政権の誕生で、そんな航空行政にも変化の兆しはある。

 前原誠司国土交通相は、就任当初から「空整特会」を抜本的に見直す方針を表明。財務省との調整が進まず、来年度予算への反映こそ見送られたものの、「基本的に新たな空港をつくらないという視点は貫く」と改革する意志は変えていない。

 「あるものは使う。使えるような状況をつくっていくことが大事」。前原国交相はアジアを中心とする海外からの誘客にも期待を寄せるが、不採算空港については廃止・縮小も含めて議論すべきだ、との声は根強い。一方で、利用客こそ少ないものの住民のライフラインとして欠かせない離島空港もあり、採算だけで切り捨てられないのも事実だ。

 日本航空で地上職として勤務した経験がある、戸崎肇・早稲田大教授(交通政策)は「北海道・東北・関東・中部…といった大きなゾーンに1つずつ、それを補完する形でよりローカルな空港がある形が望ましい。離島空港を加えても30くらいが適正な数では」とみる。

 将来展望を欠いた航空行政のゆがみは、先の事業仕分けでもやり玉に上がった。伊丹(大阪)や神戸空港に隣接し、多額の有利子負債を抱える関西国際空港への補給金160億円の予算計上について、行政刷新会議は「凍結」すべきだ、と結論づけたのだ。需要を食い合う3つの空港のあり方を抜本的に見直す必要がある、というのが判断の理由だった。

 戸崎教授も「地域ごとに空港がタッグを組み、空港ごとの特徴を明確にする仕掛けが必要。活用できるものは活用して、どうにも採算が合わない空港は廃止やほかの用途への転用も視野に入れるべきだ」と話している。

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